WORKS

HOTEL – Kikka Hirado

HOTEL – Kikka Hirado

平戸 / 長崎

Architecture
Hotel

文化が交錯する風景

九州本土の西北端である長崎県平戸市は、16世紀半ばに西洋の文化が流入し、西洋と日本の文化の交錯地点であると同時に、西洋文化が日本各地に広がりをみせる始まりの場所でもある。

敷地となる平戸瀬戸という雄大な海の風景を望むこの土地は、平戸藩主第10代松浦熈(ひろむ)公の別邸跡に梅ヶ谷津 偕楽園が国指定文化財として隣接している場所である。この計画は、当時、藩主が和歌を読み、風景を観賞し、余暇を過ごした別邸からの変わらない平戸瀬戸の風景を主役としている。この場所に宿泊施設として建築が生まれることで、この異文化が交錯するこの場所の魅力が顕在化すればと考えている。

建物は、レセプション、レストランのある平家の木造棟と、RC打ち放し2階建ての客室棟の2つの建物を分棟形式で配置した。三俣に分かれる切妻屋根の木造棟は、羅針盤の針のように風景を規定している。建物へのアプローチとしての山の風景、平戸瀬戸を一望する海の風景、建物を繋ぐ景石の庭の風景と、それぞれの間の風景に個性を与え、土地の持つ魅力が顕在化するように切り分けることを意図し配置している。 また、コンクリート打ち放しの外壁に、垂木を掛けた木造屋根、西洋から受け入れたステンドグラスが特徴となる客室棟は、コンクリートでつくられた客室の入る3つのボリュームと、木造の大きな屋根で構成される。コンクリートの外壁と、木造の軽やかな切妻屋根の折衷は、異国の文化を受け入れてきた、平戸独特の弁証法的な折衷の様相を想起させる。また、それぞれの客室へのアプローチとなる半外部空間の階段室は、海、庭、山の風景を借景として切り取りながら、風景を連続的に繋ぐ孔の空間として機能している。

「風景への参加」
かつて、藩主が眺め、愛した美しい平戸瀬戸の風景を絵画のように切り取りたいと考えた。
客室の窓辺には、木製のフレームでつくられた大きな額縁を設け、ソファのある寛ぎの場を設けている。
寝室は、ベッドではなく柔らかな畳の寝台に布団という構成とし、日本的寛ぎを表現した。
日本と西洋の文化が交錯する設えの中で、美しい海を眺めながら余暇を楽しむ為の居場所となればと考えている。
また、このホテルの滞在者は、この額縁により、数百年もの間変わらない平戸の風景と共に切り取られ、風景の一部となる。

DATA

  • 竣工
    2024.07
  • 設計監理
    佐々木達郎建築設計事務所
  • 所在地
    長崎県平戸市
  • 施工
    日本エコネット
  • 用途
    ホテル
  • 構造設計
    KAP
  • 構造
    リビング棟/木造 客室棟/鉄筋コンクリート造
  • 照明
    ICE都市環境照明研究所
  • 階数
    リビング棟/地上1階 客室棟/地上2階
  • ランドスケープ
    SEABASS
  • 敷地面積
    2930.34m²
  • サイン・グラフィック
    mém
  • 建築面積
    528.47m²
  • ブックディレクション
    good and son
  • 延床面積
    647.82m²
  • 写真・企画監修・WEB
    ディスカバリー号
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